平ヶ岳を良く知るためのキーワード2
(平ヶ岳の湿原について)

平ヶ岳の地形的特徴
平ヶ岳の西側を流れた水は利根川に入り太平洋に注ぎ、東側・北側を流れた水は奥只見湖に入り只見川を経由して阿賀野川から日本海に注ぐ。平ヶ岳は太平洋と日本海の分水嶺を形成している。そのため天候についても太平洋側と、日本海側の両方の影響を常に受けることになり近くにある谷川岳と同様に複雑な様子を見せることに注意が必要である。冬の日本海側の雪の影響について平ヶ岳に該当する部分をて以下抜粋したもので参考にしてください。

奥利根地方の特徴
利根川の流域は、谷川岳から北東方に連なる朝日岳・巻機山・丹後山などの稜線と、そこへ南東方からのびてくる稜線にはさまれている。群馬県最北のこの地域は豪雪地帯である。奥利根に雪をもたらすのは、いうまでもなく冬の季節風である。季節風による降雪が稜線の風下側でどこまで及ぶかという研究は古くからある。降雪と晴天の境界線は日によっても違うが、草津・四万・水上・尾瀬ヶ原・戦場ヶ原・那須茶臼岳などを連ねる線のあたりになることが多いといわれている。

上越国境の山は日本海側のスノーベルトと太平洋側のサンベルトの境界に位置する上越の山やまは、世界的な豪雪山地で、雪崩地形や山地の植生などにほかの山地とはちがった特徴がみられる。

多雪山地のもう一つの特徴は、頂が平らな峰(平頂峰)の上や山腹の緩斜面に湿原が多いことである。八甲田や尾瀬の湿原のような火山活動に関係してできたものや、地すべりの凹地に溜ったものも少なくないが、それらとは無関係のものも多い。いずれの場合にも気温が低いばかりでなく、残雪からの冷たい雪融け水がその形成に大きな役割を果たしている。

奥利根地域は一部を除いて花崗岩類が多い。古い発電所は多くはないが、渇水流量は割合豊富である。日本の花崗岩類は、程度の差はあれ、深部まで風化して「マサ」の変質していて、水の浸透や地下水貯留に有利な条件となっていると言われている。
「日本の自然3 関東 1994年 岩波書店」多雨と小雨が接する地域 奥利根地方から抜粋

平ヶ岳の湿原について
平ヶ岳の湿原に関する詳しい文献は見つけられませんでしたが、平ヶ岳・池ノ岳山頂の湿原を特徴付ける高層湿原に注目する必要があります。似たような湿原は平ヶ岳の付近では尾瀬のアヤメ平や会津駒ヶ岳の山頂や中門岳への稜線上の湿原がありますが、同様の成因をもつものと思われます。高層湿原とは高いところにある湿原の意味ではありません。北海道や樺太では低地に高層湿原や低層湿原もあります。日本の文化は昔から湿原との関係が密接ではなかったためか湿原の部分を表す特有な言葉がありません。ところがドイツのように湿原に関する文化を持っていたところでは、小凸をピューテル、小凹をシュレンケ、湿原のまわりにある小池(池塘)をコルクと呼ぶなど、湿原の部分についての特有の言葉があります。ここで少し湿原について調べてみましょう。最初に湿原泥炭は切っても切れない関係について阪口豊氏が「尾瀬ヶ原の自然史」(中公新書、1989)の中で以下のような面白い指摘をしています。

湿原は地表の植生や景観に着目し、泥炭地は土地の構成物質に着目した用語である。日本では多くの場合、生物学者は「湿原」を地学・農学・工学関係者は「泥炭地」を使用する。しかし景観的には湿原であっても、必ずしも泥炭層があるとは限らない。

さてそれでは専門の辞書や百科事典で湿原や泥炭について調べてみましょう。
平ヶ岳の高層湿原の中にある池塘については各辞書には記載が無いため再び阪口氏の本からまとめてみました。

池塘 ちとう
尾瀬ヶ原にちりばめられた池は池塘と呼ばれている。この言葉がいつ頃から使われ始めたかは知らない。この奇妙な水体を表現するには「池」や「池沼」よりも「池溏」の方がふさわしいように思う。「尾瀬と檜枝岐」(那珂書店1943)の編著者川崎隆章は、同書の中で「池溏と池塘を混同している人が多いが、溏は池水であり、塘は池水の堤である」といっている。たしかに「塘」の第一義は「つつみ」であるが、第二義には「ため池」があり、塘は堤なりと断定することはできない。私たちが調査し始めた1950年頃は「池溏」であった。それがいつしか「池塘」に変わった。誰かの単純な誤記が元ではないかと思う。私は調査開始時の「池溏」にこだわることにする。尾瀬ではかつて「壺沼」という呼び方があったという。池溏は多くの場合、岸が棚状に水面に突き出し、岸が深くえぐられたようになっているので、断面を描くと、口がすぼまり胴のの張った壺のような形になる。うがった名称だと思う。英語ではプール、ポンド、ドイツ語ではブレンケン、コルク、モールアウゲン(泥炭地の眼)などと呼ぶ。北海道でも泥炭地の池を「谷地まなこ」という。

池溏の水生植物と深さとの間には一定の関係があることがわかる。池溏の中にはその底が水生植物の生えたまま浮き上がっているものがある。池溏の堆積物は腐植泥だけで泥炭層がないことから、池溏は泥炭地の形成と同時に発生している。階段状に池溏が分布するところでは、平坦な基盤とやや急斜した基盤とが交互に現れ、池溏は基盤の平坦なところに形成されていることなどから、階段状の池溏の場合にはその形成に基盤の地形が大きく影響している。
「尾瀬ヶ原の自然史 中公新書、1989」から

池塘の中の浮島
池塘の中には円形の島のあるものがある。あるものは浮遊し、いわゆる浮島となっている。浮遊している浮島は、時には岸の一方に打ち上げられていることもある。おそらく池塘の水位が異常に高くなった時に、風で吹きよせられたためであろう。浮島は池塘の水深が深くなるとともに島をつくる泥炭の浮力で基底から分離してできると考えられる。浮島はやがて分解されたり、浮力を失って池塘底に沈む。
「尾瀬ヶ原の自然史 中公新書、1989」から

平ヶ岳の高層湿原、池塘とその中の浮島

山頂の高層湿原の池塘と浮島。後ろに越後駒ヶ岳を望む。
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玉子石の西側の高層湿原、池塘の中に浮島が見える
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一般的な浮島の説明は以下のとうり。

浮島 (世界大百科事典 第2版 CD-ROM版 日立デジタル平凡社)
植物や植物遺体(泥炭または枯死体)からなり、湖沼や河川に浮遊する島。浮島が浮遊するのは、植物や植物遺体のもつ浮力と浮島内部に発生するメタン、二酸化炭素などのガスによる浮力によっている。日本では、尾瀬ヶ原に代表される
高層湿原の池沢に浮島は多くみられ、池底から水面に浮上したコウホウネ類などの浮葉植物の根茎や、水面に伸びるミツガシワの根茎を核にしてスゲ類やミズコケ類が侵入して浮島が発達することが知られている。大きさは普通は数m2程度までだが、時には数haに発達する。(京都市深泥池、山形県琵琶沼)。泥炭塊が浮上する場合(鹿児島県藺牟田池)や浮島に高木が生育する場合(和歌山県新宮藺沢)もある。高層湿原以外でも、ヨシ、マコモなどの抽水植物が岸から離れて浮島となる場合がある。熱帯・亜熱帯では、ホテイアオイ、ボタンウキクサなどの浮遊植物やイネ科・カヤツリグサ科の抽水植物からなり、浮芝suddと呼ばれる浮島が広く見られ、船の運航に障害となるなど巨大に発達する場合がある。乾期には露出した湖底・河底に生えた植物が雨期の増水時に湖底から離れて浮島となる場合も知られている。

湿原
土壌が低温、過湿などのための枯死体の分解が阻害され、泥炭が堆積した上に発達する草原。群落の種類、組成、泥炭の構成、植物・生態的条件などから、低層湿原、中間湿原、高層湿原に分けられ、また栄養塩類含有量から富栄養湿原、中栄養湿原、貧栄養湿原に分けられる。低層湿原→中間湿原→高層湿原→山地草原・森林のように湿性遷移系列がみられる。
「岩波生物学辞典 第3版」から

低温や過湿などのため枯死体の分解が進まず泥炭の堆積した上に発達する草原。湖沼や川の水辺にできる平たんな低層湿原はヨシ,スゲの類が優占し,中性で富栄養的な水に養われる。日本では,関東以西の平地に小規模のものが散在する。一方,温帯以北の湿潤地にできる高層湿原ミズゴケを主とし,モウセンゴケ,ツルコケモモなどがはえ,酸性で貧栄養的な水で養われる。霧ヶ峰,尾瀬ヶ原,戦場ヶ原などがこの例。
「マイペディア97 1997年 Mac版 日立デジタル平凡社」から

湿地帯
地下水面が、地面と同じ高さか、地面より上か、あるいは地面のすぐ下で、木の生えていない地帯。
湿原ともいう。地面のほうが水位より低く、水にひたされているものを低層湿原という。反対に水位より高いものを高層湿原といい、同じ高さのものは中間湿原とよばれる。優占種はアシなどのイネ科の植物や、スゲ、ガマである。これらは典型的な抽水植物、すなわち根をおろした土壌が水におおわれるか、ひたされており、葉を水面の上にだしている植物である。

湿地のタイプ
湿地には淡水のものと海水のものがある。淡水湿地は、湖沼や流れのゆるい川の周辺部で、水の浅い区域に発達し、湖沼が堆積(たいせき)物にみたされるとできる。塩湿地は海岸の干潟に形成される。内陸の塩湿地は、塩水湖の縁にみられる。湿地の性質、すなわち植物の構成、種の豊富さ、生産量は周囲の生態系との関係に大きく影響される。周囲の生態系は、栄養物質の供給、水の動き、堆積物のタイプや堆積量を左右するからである。

北アメリカの氷河作用をうけた中央部にある、プレーリーのポットホール地帯では、淡水湿地が周期的に復元作用をうけている。これは乾燥期にはじまり、マスクラットの採餌習性によって維持される。この周期はまず、湿地がほとんどかわききり、水生植物の種が泥の中で発芽するところからはじまる。湿地に水がみたされると、水生植物は密生する。マスクラットは抽水植物を広域にわたって食べ、水面が露出する部分をつくりだす。こうして浅水の抽水植物はおとろえるが、沈水植物(体全部が水面下にある植物)と浮葉植物(葉が水面にういている植物)はのこる。次の乾季がくると、この周期がふたたびはじまる。塩湿地は北アメリカとヨーロッパの大西洋岸でもっともよく発達している。北アメリカ東部の低層湿原の優占種はミクリの仲間1種だけである。高層湿原はミクリ、スゲ、アッケシソウなどからなる。アッケシソウは、太平洋岸の塩湿地の優占種である。

水と植生のパターン
エバーグレーズ湿地(
エバーグレーズ国立公園)で、葉がのこぎり状のスゲの仲間が優占する湿原や、1日2回潮流にあらわれる塩湿地のような湿地帯では、水は地面全体をおおうようにながれる。そうした地帯には、ふつう1種または2種の抽水植物が優占種としてみられる。別の湿地では、水が一面というよりは水路をなしてながれ、雪解けや降水量の多いときだけ地面をひたし、栄養物質と堆積物をもたらす。こうした不規則な堆積のために水深は場所ごとにさまざまで、多様な湿地帯の種が生息できる条件をつくりだす。低層湿原の水には沈水植物(ヒルムシロ)や浮葉植物(ヒツジグサ)が群落をつくる。水が浅いところには、アシやワイルドライスがそだつ。とくに浅いところではスゲ、ホタルイ属やイグサ属、ガマが生える。土砂の堆積物や有機物質の沈殿によって、湿地の底が地下水面よりも高くなるにつれて、しだいに水生植物にかわって低木がみられるようになり、最後には山地の草や森林の木からなる陸上生態系になる。

重要性 淡水湿地は、水鳥や岸辺にすむ鳥、マスクラット、カエル、その他多くの水生昆虫に営巣場所と越冬場所を提供する(→ 淡水生物)。塩湿地はハクガン(→ ガン)やカモの越冬地、サギやクイナの営巣場所、そして汽水域の水の栄養源となる。湿地帯は洪水防止、高い地下水面を維持するためにも、また下流の汚染をへらす沈殿池としても重要である。湿地は環境としての価値が高いにもかかわらず、干拓や埋立てによって破壊されつづけている。→ 泥炭地Microsoft Encarta 98 Encyclopediaから

湿原は植生学上、低層湿原、中間湿原、高層湿原に区分される。低層湿原は北海道から沖縄まで広い範囲に分布する。生活域周辺に分布するものが多く、直接的な改変、水質汚濁等の圧迫を強く受けている。中間湿原は、屋久島を南限とし我が国の冷温帯に広く分布する。高層湿原は中間湿原と同様に屋久島を南限とし、北海道と本州中部以北、特に北海道に大半が存在する。これらの高層湿原は氷河期の遺存種等の動植物の生育生息環境として重要である。また、土壌及び水理条件から見た場合、湿原は泥炭を生成する湿地として把握され、降水のみによって涵養されるタイプと集水域から栄養塩類を供給されているタイプの2つに区分するのが一般的である。尾瀬ヶ原などは、これらの2区分の複合した構造となっている。後者のタイプの湿原においては、周辺地域の開発等の影響を受け易いので、湿原の保全に当たって十分な配慮が必要である。
環境庁の生物多様性国家戦略(日本政府1995.10) 資料 4. 第1部 生物多様性の現状、4 主要な生態系の特性(1)陸域 ウ湿原から」

高層湿原
塩類の供給の乏しい低温、過湿の地に発達する。湿原で低層湿原と異なりミズゴケを特徴とするところからミズゴケ湿原ともいう。草原の群系の一つ。土壌は腐植酸や不飽和コロイドにより酸化しOH-を嫌うミスゴケ類が湿原周辺よりも中央部によく生育し泥炭化が盛んで、中央部が高まり時計皿をふせたようになるため「高層」の名がある。日本の中部地方では約1,200m以上の地に発達し、北に行くほど下限はさがる。八島ガ原(霧ガ峰)、尾瀬ヶ原、戦場ヶ原(日光)、八甲田山の湿原が好例。北ヨーロッパや樺太では平地にある。一般に樹木は侵入せず限られた植物が丈の低いやまばらな群落を作る。ミズゴケのほかミカズキグサ類、ヌマガヤ・ホロムイスゲ・ヒメシャクナ・ツルコメモモ・モウセンゴケなどがある。高層湿原は多く低層湿原から発達する。泥炭の堆積は1mm/年程度といわれ、八島ヶ原は約7,000〜8,000年の堆積でできている。泥炭層の花粉は花粉分析のよい対象となる。泥炭の成長につれて徐々に乾燥し山地草原や森林に移行する。
「岩波生物学辞典 第3版」から

泥炭 Peat
沼沢地・湖などの湿潤地に生育した樹木・草本類および藻類・コケ類などが嫌気性の環境のもとに堆積しある程度の生化学的分解をうけたもの。草本類を主体とするものを草炭という。花粉、胞子・珪藻などもはいる腐植の結果フムス質のゲルなどを生じ、アルカリによって分解される部分も多い。環境的には微生物の発育のすくない寒冷地に生じ南北緯45以上の地域に多い。熱帯では分解より植物の堆積量が多いときに生ずる。泥炭形成の途上ではメタン、硫化水素などが逸脱しC,Oなどの量が多くなる。構成植物によってスゲ泥炭・
ミズゴケ泥炭などと区別。地質時代には第4紀以降にに存在。日本でも東北地方以北および中部地方以南の標高1,000m以上の湿原にある。ミズゴケ泥炭の一部にはとくに分解の進んだ部位がみられることがあり、気候条件の悪化と結びつけ再帰層と名付けられ紀元前500年ころの形成と考えられる。最近では同様んも環境が他の層位にもあることが判明している。
「地学事典 平凡社 1981年」から

ピートとも。湿地や浅沼に植物遺体が厚く堆積しある程度生化学的分解を受けたもの。石炭生成の第一段階。黄褐色または褐色を呈し,ふつうそれを構成する原植物の組成を肉眼的に識別し得る。乾燥すれば燃料となり,草炭とも呼ばれる。構成植物がおもにアシ,スゲなどである泥炭を低位泥炭,樹木の落葉などである泥炭を中間あるいは森林泥炭,ミズゴケを主とするものを高位泥炭という。保水材,土壌改良剤として園芸や農業に利用,またウィスキー製造過程のモルト乾燥には不可欠。
「マイペディア97 1997年 Mac版 日立デジタル平凡社」から

湿地の酸性水の中で植物質が不完全に腐敗して炭化した有機物質。炭素の含有量が高く、かたくしまってこげ茶色をしている。北半球では、泥炭を形成する植物の大半はミズゴケなどの蘚類である。泥炭の形成は、植物が石炭に変質する最初の段階をあらわしている。泥炭地は世界じゅうに分布している。ひろく分布しているのはアメリカ合衆国北部、カナダ、ロシア、スカンジナビア諸国、イギリス、アイルランドである。日本では、北海道のサロベツ、釧路などに泥炭地がひろがり、本州では尾瀬ヶ原などの湿原で小規模なものがみられる。

多くのヨーロッパ諸国、とくにアイルランドでは、乾燥泥炭を圧縮して練炭にし、燃料としてもちいている。ただし水分と灰分の含有量が多いため、石炭ほど効率はよくない。ウィスキーの麦芽乾燥材としてもつかわれる。泥炭や腐敗した植物質を調合して商品化したピートは、保湿性にすぐれ、植物の根覆いや土壌改良剤として使用される。
Microsoft Encarta 98 Encyclopediaから

泥炭地
泥炭の堆積している土地。亜寒帯と温帯の一部に多い。浅い湖沼,河川の岸などでアシ,スゲなどが茂るところには低位泥炭地ができる。これが水面上に盛り上がると樹木が侵入して森林となり中間泥炭地となる。森林化すると土地は湿潤となりミズゴケが生育し厚い層となって堆積して高位泥炭地が形成される。高位泥炭地は泥炭の成長により時計皿を伏せたような特有の微地形を作り,その間に池沼を形成し,その景観は高層湿原と呼ばれる。発達した泥炭地では,周辺から中心部にいくにつれ,低位→中間→高位の順に同心円状に配列する。北海道には今なお広大な各種の泥炭地が分布,また,尾瀬ヶ原はミズゴケ泥炭地として有名。泥炭の堆積速度は日本で0.5〜1.5mm/年,熱帯で3.4mm/年という値が得られている。
「マイペディア97 1997年 Mac版 日立デジタル平凡社」から

泥炭湿原ともいう。有機物質が、分解よりはやい速度で生産された結果、植物遺体が分解不完全なまま堆積(たいせき)した生態系。また、こうした物質を泥炭という。泥炭がそれほどあつく集積していない泥炭地では、無機質の養分をふくむ地下水に植物が接触できる。こうした泥炭湿原は無機栄養性(富栄養性)湿原といい、スゲの仲間が優占種である。泥炭の層があまりにあついために、地表の植物が無機質にとむ土壌から隔離されてしまう泥炭湿原もある。これらの植物は、水も栄養も降水からえている。こうした泥炭湿原を降水栄養性(貧栄養性)湿原といい、酸をつくるミズゴケが特徴である。

泥炭地は北方の地域で広範にみられる。泥炭地は水はけがわるく、降水がたまり、有機物質の分解がすすまないところで発達する。蓄積した有機物質や堆積物が、地下水面より上で湖沼をみたしてできる泥炭地もある。こうした高層貧栄養性湿原はミズゴケでおおわれ、酸性度があまりにも高く、地下水からの無機質がとぼしいため、スゲやアシは周縁部へと後退する(→ 湿地帯)。これほどふつうにはみられないが、ミズゴケが水にうかぶ浮島状になることがある。こうしてもりあがったミズゴケはあつくなり、おもにヒース(エリカ、ハイデソウなどの群落)に生息場所を提供し、最後には水底に到達する。日本では、こうした場所でヒメシャクナゲ、ツルコケモモ、モウセンゴケなどがみられる。一定の条件のもと、とくに森林が伐採されたところでは、スゲとミズゴケは高地まで進出する。これらの植物が形成する泥炭は圧縮されて、排水を阻害する。これらはブランケット泥炭地とかブランケット湿原とよばれる。

高緯度地域の貧栄養性湿原は酸性度が高く、しめっており、気温が低く、酸素が欠乏するために、過去の生物の宝庫となった。貧栄養性湿原に保存されている花粉は、昔の植生や気候を知る手掛かりとなる。ヨーロッパ北部では、泥炭地によい状態で保存されている人体・衣服・食物・道具・装身具から、2000年前の人間の生活について知ることができる。

泥炭は何世紀もの間、燃料として利用されてきた。エネルギー源として重要であるため、大量に発掘された結果、泥炭地は今では危険にさらされた生態系となっている。
Microsoft Encarta 98 Encyclopediaから

ミズゴケ
ミズゴケ科のコケ植物蘚類。世界に約300種,日本にも約40種が知られる。酸性の水湿地,特に高層湿原に多く,ツンドラの主要構成種としても知られる。淡緑色,ときに赤褐色の群落をつくり,植物体の古い部分は枯死して泥炭となる(ゆえにピートモスとも呼ばれる)。茎は長くのび,多数分枝して,舌状の葉を密につける。葉は葉緑体をもつ細長い細胞と,大型で葉緑体のない透明細胞とからなり,後者は水分の保存に役立つ。吸水・保水力を利用して,湿生・着生植物の栽培用土,植木の移植などに用いられる。
「マイペディア97 1997年 Mac版 日立デジタル平凡社」から

Sphagnum 蘚類(コケ植物)のミズゴケ科ミズゴケ属の総称。ピートモスともよばれる。葉の組織には、水をたくわえる中空の細胞がたくさんある。浮島になった塊にほかの植物がすみつき、やがて湿原をうめていく。それらの植物は死ぬと、沼の水中に堆積(たいせき)して泥炭にかわる。生きているコケも泥炭もよく水を吸収するので、土壌改良剤としてつかわれることが多い。→ 泥炭地
ミズゴケ類は世界に約300種あり、そのうち日本に約50種が自生する。亜高山帯〜高山帯、あるいは東北、北海道の
湿地帯に多い。日本の代表種はオオミズゴケでほぼ全国的に分布する。そのほかホソバミズゴケ、ウロコミズゴケなどがある。
ミズゴケ類は吸水力、保水力にすぐれ、くさりにくいので、園芸植物の栽培用土につかわれるほか、苗木、球根、ランなどの根をつつむために利用される。
分類:ミズゴケ科ミズゴケ属。オオミズゴケの学名はSphagnum palustre。
Microsoft Encarta 98 Encyclopediaから

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